番外編 第1話「うますぎる話にはワナがある」

※フィクションです。
福岡の静かな裏通りに佇む純喫茶『ふくろう』。今日もレトロな時計の針が午後の時間をゆっくり刻む中、一人の男が重い足取りでドアを開けた。
「こんにちは……玄蔵さん、いますか?」
「おう、来たか直樹。今日は顔が冴えとらんのぅ。どうしたんじゃ?」
カウンター奥で新聞を広げていた田中玄蔵が、眼鏡越しににやりと笑った。
「いや……SNSで知り合った人に、“年利30%確定”って投資案件を紹介されまして。詳しく聞いてみたら、元本保証で、最低50万円から参加できるって……正直、すごく気になってて」
「年利30%、元本保証……ふむ、なんとも香ばしい響きじゃのぅ」
玄蔵は湯呑みを一口すすり、懐かしそうに言った。
「こりゃあワシが40代の頃、まさに似たような話に引っかかりかけた“利回り保証詐欺”とそっくりじゃ。あのときはワシの嫁さんにこっぴどく怒られてのぅ。『そんな話があるなら、誰も働かんでええやろ!』っての」
直樹は苦笑した。
「でも、これ見てください。この通りその人、インスタのフォロワーも多いし、写真も豪華な生活してるっぽくて……やっぱり本物かなって。紹介してくれた企業のホームページもちゃんとあるし」
その時だった。
「こんにちは、直樹さん。お話、拝見しました。対象案件の企業名、URL、代表者名、登記番号、すべて収集完了。――結果、金融庁の登録業者データベースには見つかりませんでした」
いつの間にか、壁に設置されたモニターに現れたのは、AIアシスタントのAIMON。
「つまり、無登録営業の可能性が高いということです。ちなみに、こういった“確定利回り”を謳う事業者は、過去にも摘発例が多いです。ご希望であれば、その一覧をPDFで出力しますよ?」
「いや、そこまでしてくれなくていいって……」
直樹は冷や汗をかいた。
「AIMON、ありがとな。こりゃ完全に怪しい話じゃな。直樹、わしが昔学んだ大事な原則を教えようか?」
玄蔵は指を一本立てる。
「『うまい話にはウラがある』。投資の世界では、“高利回り確約”なんていう言葉はまず疑え。実際、そんなリターンが保証されるなら、金融機関やファンドがとっくに資金を突っ込んどる」
「確かに……言われてみれば、そんな美味しい話がSNSで回ってくるのも変ですよね」
「そうじゃ。SNS経由の勧誘は“相手の素性が見えん”のが怖いんじゃ。写真も実績も、今どきAIや画像編集でいくらでも盛れる。肝心なのは、実在する登録業者か、金融庁に届け出があるか、じゃ」
AIMONが補足する。
「ちなみに、金融庁の“無登録で金融商品取引業等を行う者の名称等一覧”は常に更新されています。直樹さんが興味のある案件が本物かどうか、そこを確認する癖をつけましょう」
「はい、わかりました。完全に目が覚めました……危なかった」
玄蔵はにやりと笑った。
「直樹、投資家になったからには“疑う力”も大事なんじゃ。なんでもかんでも信じて動いとったら、いつかカモにされる。AIMONもうまく使いこなすんじゃぞ」
「ええ、肝に銘じます」
AIMONが合いの手を入れる。
「では直樹さん、今のあなたに向いている投資スタイルを改めて診断してみましょうか?数問の質問に答えるだけで、リスク許容度や性格にあった投資方法を分析できます」
「……お願いします。今度こそ正しい方向で、ちゃんと学んでいきたいんです」
コーヒーの香りが、ふわりと鼻をくすぐった。直樹の目には、わずかにだが確かな覚悟が宿っていた。
◆今回の学びポイント
- 「年利○%保証」は投資詐欺の典型ワード。そんなうまい話はまず疑おう。
- SNS経由の投資話は、相手の実態が不透明で危険。慎重に調査を。
- 金融庁の登録を必ず確認する癖をつけよう。
- 知識だけでなく、「疑う力」も投資家に不可欠なスキル。
- AIMONのようなツールをうまく活用して、自分に合った投資を見極めよう。
※次回予告
【第2話】「怪しいZoomセミナーの招待状」
SNSで出会った人物から届いた、限定セミナーの招待。高性能AIによる“自動売買システム”の実績に隠された“嘘のカラクリ”とは?玄蔵とAIMONがまたもや活躍!
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